2003年12月15日

市民活動による移送サービスの法的位置付に際しての基準に関する要望


国土交通大臣
 石原 伸晃  様

移送・移動サービス地域ネットワーク団体連合会

 障害者・高齢者の移動円滑化について、公共交通機関等のバリアフリー化の促進などの施策の推進をいただき御礼申し上げます。

 さて、国土交通省では、市民活動による非営利の移送サービスの法的位置付けについて、昨年より検討されておりますが、この動きは、1970年代から、車いす利用者に代表される公共交通を単独で使用することが困難な方(以下、移動困難者)に対し、地域における助け合いのボランティア活動として、ドア・ツー・ドアで介助と移動手段を提供してきたこの活動が、社会的に認知される第1歩として歓迎しております。

 しかしながら、その試行として実施された構造改革特別区域(以下特区)における「NPOによるボランティア輸送としての有償運送可能化事業」での基準や実施手続きにおいて、現状の活動にそぐわない内容や、必要以上に制限を設けようとする例が報告されております。したがって、この特区をもとに全国で実施する基準(以下ガイドライン)及び運用を決定する際には、移動困難者の移動の権利の保障と利便性の確保の観点から、以下の点についてご検討をお願い申し上げます。

 また、その前提として、現状の一般乗用旅客自動車運送事業のみでは、移動困難者の需要に応じることが著しく困難であり、市民活動による非営利の移送サービスも推進して、共存することが、移動困難者の利益になることを認識していただきたく、合わせてお願い申し上げます。


1.特区において設置が義務付けられている運営協議会は、そのままガイドラインに盛り込むことがないように強く要望する。
 これは、全国での実施に際して、特区と同等の運営協議会の設置が要件とされた場合、現状の活動にそぐわない条件や必要以上の制限を設けようとする問題や、地方自治体の考え方次第で運営協議会が設置されないことが予測され、移送サービスの推進の障害となりかねないからである。

2.実施主体は、特定非営利活動法人や社会福祉法人等の公益法人を対象とすることを基本としつつ、任意団体も対象とすることを要望する。
 任意団体の場合は、特定非営利活動法人に準じた情報公開の義務付けをもって、条件とするようにされたい。

3.利用の対象者は、公共交通を単独で使用することが困難な方(移動困難者)とし、更に短期の傷病者も対象にとすべきであり、その場合は医師の証明もその基準とするように要望する。また利用者の介助者及び同伴者も必要に応じて、同乗を認めるように要望する。

4.移送サービスにおける使用車両は、特区1206に定める福祉車両を基本とするが、利用者の障害程度における使い勝手を考慮し、補助的に普通自動車の使用も認めることを要望する。
 なお、この普通自動車に使用権限が個人にある車両(いわゆるマイカー)を使用する場合は、特区1207における2003年10月23日付通達における要件の弾力化基準を準用することとされたい。

5.移送サービスにおける運転協力者の資格については、普通第2種免許の義務付けはしないことを強く要望する。
 移送サービスは、予約運行によるドア・ツー・ドアを基本とする介助と送迎が一体化したサービスであり、流し営業によるロード・ツー・ロードを基本とする一般乗用旅客自動車運送事業の資格である普通第2種免許は相応しいものではない。市民団体は、独自に十分な研修を行うことによって、安全性を担保するものとされたい。
 また、現行の福祉輸送事業者の運転者に義務付けされていない資格の取得や運転経歴等の証明の提出を義務付けないように合わせて要望する。法的に義務付けの無い資格の取得や書類等の提出義務付けは、規制緩和の趣旨に反するものである。

6.移送サービスの利用料は、ドア・ツー・ドアのサービスであることを勘案し、単純にタクシー料金との比較をもって営利、非営利の区別をせず、個々の利用状況と団体の運営内容をもって判断することを要望する。なお、直接的な目安を設ける場合は、「同一営業区域の福祉タクシーの料金を越えない範囲」とされたい。更に介助・介護にかかわる利用料については、道路運送法の適用外なので、上記判断の際の対象に含めないものとされたい。
 また、車両のガソリン代・維持管理経費程度の収受については、道路運送法の適用外となる「無償」に含めるように要望する。

7.ガイドライン施行後、その運用に関しては、非営利の市民活動であることを考慮し概ね5年程度の猶予期間をおき、その後もガイドラインを根拠とした取締りを行わないように要望する。
 なお、この運用については、国土交通省が明言するように併せて要望する。


移送・移動サービス地域ネットワーク団体連合会
 北海道移送・移動サービスネットワーク
 青森県移送サービスネットワーク
 移送サービス研究会
 埼玉県移送サービスネットワーク
 東京ハンディキャブ連絡会
 北陸移動サービスネットワーク
 長野県ハンディキャブ連絡会
 東海福祉移動研究協議会
 愛知県ハンディキャブ連絡会
 京都移動サービス連絡協議会
 関西STS連絡会
 兵庫県移送サービスネットワーク
 特定非営利活動法人 移動サービスネットワークこうべ
 高知の移送サービスを考える会
 熊本外出支援ネットワーク

上記団体に所属する移送・移動サービス実施団体 約400団体


事務局:
〒162−0828
東京都新宿区袋町24 岡田ビル2F
TEL&FAX03−5261−9009

戻る