国自旅第231号

平成15年3月18日

各地方運輸局長  殿
沖縄総合事務局長 殿

自 動 車 交 通 局 長

構造改革特別区域法に係るNPOによるボランティア輸送としての有償
運送可能化事業における道路運送法第80条第1項による申請に対する
取扱いについて

 今般、構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第3条に基づく構造改革特別区域基本方針(平成15年1月24日閣議決定)別表1No.1206において、「NPOによるボランティア輸送としての有償運送可能化事業」が盛り込まれたところであり、構造改革特別区域法附則第3条に規定する措置(構造改革特別区域基本方針2.(6)A及び別表1No.1206)に基づき、地方公共団体が、当該地域内の輸送の現状に照らしてタクシー等の公共交通機関によっては移動制約者に係る十分な輸送サービスが確保できないと認めるとともに、一定の特定非営利活動法人(特定非営利活動促進法(平成10年法律第7号)第2条第2項に規定するものをいう。以下「NPO」という。)等によるボランティア輸送における有償運送の実施管理のための当該地方公共団体を含む関係者による運営協議の場を設け、判明した問題点等について速やかに報告する体制を整えて、内閣総理大臣による構造改革特別区域計画の認定を申請し、その認定を受けたときは、当該NPO等による道路運送法(昭和26年法律第183号。以下「法」という。)第80条第1項に基づく申請に対し、速やかに許可を行うこととなったところである。

 以上の点を踏まえ、本件取扱いについては、下記の点に留意して行うこととされたい。 なお、本件については、社団法人全国乗用自動車連合会会長及び財団法人全国福祉輸送サービス協会会長あて別添1のとおり通知するとともに、各都道府県交通担当部長あてに別添2のとおり参考までに通知しているので、了知されたい。

1.必要性
 地方公共団体が、当該地域内の輸送の現状に照らしてタクシー等の公共交通機関によっては移動制約者に係る十分な輸送サービスが確保できないと認めること。この場合において「当該地域内の輸送の現状に照らしてタクシー等の公共交通機関によっては移動制約者に係る十分な輸送サービスが確保できない」と認めるに当たっては、地方公共団体の区域における交通の状況、要介護認定を受けている者、身体障害者その他の移動制約者の状況、運営協議の場における意見等を踏まえ、合理的な理由を示して判断が行われることが必要である。

 その際、検討に当たり具体的に検討すべき点を例示するとおおむね次のとおりである。
 ・当該地方公共団体の区域において輸送の対象となる移動制約者の数
 ・当該地方公共団体の区域におけるボランティア輸送の状況
 ・当該地方公共団体の区域における福祉タクシーによる輸送の状況 等

2.運営協議
(1)主宰者
 運営協議の場は、原則として地方公共団体が主宰するものとする。ただし、地域における先進的な取組みを行う場合その他必要と認められる場合には、地方運輸局(沖縄県にあっては沖縄総合事務局。以下同じ。)又は運輸支局(兵庫県にあっては神戸運輸監理部、沖縄県にあっては陸運事務所。以下同じ。)と共同で主宰するものとする。

(2)名称
 運営協議の場の名称は、主宰者において定めるものとする(一例としては「××地区有償運送協議会」といったものが考えられる。)。

(3)運営方法等
 運営協議の場は、当該地域内におけるNPO等による法第80条許可又は更新の申請に先立って、地方公共団体又は地方運輸局若しくは運輸支局の所在地で開催するものとする。
 地方公共団体は、開催に先立って、次の資料を作成するとともに、十分な時間的余裕をもってあらかじめ参加者に送付するものとする。あわせて、更新の申請に先立って行われる場合には、輸送活動における利用者からの苦情、事故等の状況について運営協議の場に報告するものとする。

 @ 当該地方公共団体の区域における交通の状況及び要介護認定を受けている者、身体障害者その他の移動制約者の状況
 A 許可を受けようとするNPO等が作成した自家用自動車有償運送許可申請書の案及び地方公共団体の長からの具体的な協力依頼を示す書面
 B 許可を受けようとするNPO等が行おうとする自家用自動車有償運送に関し次に掲げる事項について具体的に記した資料
  ・使用する車両の自動車登録番号及び設備並びに運転者
  ・普通第二種免許によりがたい場合における十分な能力及び経験に係る事項
  ・損害賠償措置
  ・会員数及び運送の対価の額
  ・運行管理体制及び指揮命令系統
  ・事故防止についての教育及び指導体制
  ・事故時の処理及び責任体制(地方公共団体におけるものを含む。)
  ・使用する車両についての整備管理体制
  ・利用者からの苦情処理に関する体制(地方公共団体におけるものを含む。)
 C その他運営協議の場において主宰者が必要と認める資料

(4)構成メンバー
 運営協議の場の構成メンバーは、当該地方公共団体の長又はその指名する職員を含む関係者であることを基本として主宰者が定めるものとする。

 なお、標準的なものとして想定される関係者を例示すると、おおむね次のとおりである。

 ○ 協議に参加するメンバー
   ・関係する地方公共団体の長又はその指名する職員
   ・地方運輸局長若しくは運輸支局長又はその指名する職員
   ・公共交通に関する学識経験者 等
 ○ 意見を聴取するメンバー
   ・想定される有償運送の利用者の代表
   ・関係する地域の住民の代表
   ・関係する地域のボランティア団体の代表
   ・バス、タクシー等関係交通機関及び運転者の代表 等
 ※ 運送主体となるNPO等については、必要に応じて適宜説明を求めることができるものとする。

3.許可手続等
 運輸支局長は、地方公共団体からの具体的な協力依頼を示してボランティア輸送に対する法第80条第1項の許可の申請があった場合には、4.の条件に掲げる要件を満たしており、かつ、運営協議の場において協議に参加するメンバーによる協議がととのっている場合には、速やかに当該条件を付して許可を行うものとする。許可に当たっては原則として2年間の期限を付すものとする。

 また、許可後において、自家用自動車有償運送許可申請書に記載された事項及び2.(3)Bに掲げる事項に変更が生じた場合には、地方公共団体の長及び運輸支局長に遅滞なく報告するものとする。

4.有償運送の条件
(1)運送主体
 当該輸送確保について地方公共団体の長から具体的な協力依頼を受けた、社会福祉法人(社会福祉法(昭和26年法律第45号)第22条に規定するものをいう。)又はNPO(保健、医療又は福祉の増進を図る活動を行うことを主たる目的とするものに限る。)又は地方公共団体が自ら主宰するボランティア組織であること。

 なお、地方公共団体の長からの具体的な協力依頼については、依頼の相手方となる法人名及び依頼の対象となる有償運送行為を示した書面により行うものとする。

(2)運送の対象
 あらかじめ登録した会員及びその介助者・付添人とし、会員は、以下に掲げる者のうち、単独では公共交通機関の利用が困難な移動制約者であること。

   @ 介護保険法(平成9年法律第123号)に基づく要介護認定を受けている者
   A 身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)に基づき都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けている者
   B 肢体不自由又は内部障害若しくは精神障害により独立した歩行が困難な者(人工透析患者等)であって@及びAに該当しない者

 また、運送の発地又は着地のいずれかが当該地方公共団体の区域内にあること。

 なお、運送主体においては、会員の氏名、住所、年齢、要介護認定及び身体障害者手帳の交付等の事実その他必要な事項を記入した会員登録簿を作成し、適切に管理するものとする。

(3)使用車両
 車いす若しくはストレッチャーのためのリフト、スロープ、寝台等の特殊な設備を設けた自動車、又は回転シート、リフトアップシート等の乗降を容易にするための装置を設けた自動車であること。

 また、運賃及び料金、運転者の氏名並びに自動車登録番号について、利用者に見やすいよう車内に掲示するとともに、外部から見やすいように使用車両の車体の側面にボランティア輸送に係る有償運送に用いる車両である旨を表示すること。(別記参照)

 なお、運送主体においては、使用する車両の型式、自動車登録番号及び初度登録年、損害賠償措置、関係する設備又は装備その他必要な事項を記入した車両登録簿を作成し、適切に管理するものとする。

(4)運転者
 普通第二種免許を有することを基本としつつ、これによりがたい場合には、当該地域における交通の状況等を考慮して、十分な能力及び経験を有していると認められること。

 この場合において、「当該地域における交通の状況等を考慮して、十分な能力及び経験を有している」かどうかの判断に当たっては、運営協議の場における意見等を踏まえ、合理的な理由を示して判断が行われることが必要である。

 その際、検討に当たり具体的に検討すべき点を例示するとおおむね次のとおりである。
 ・申請日前一定期間運転免許停止処分を受けていないこと
 ・都道府県公安委員会等が実施する実車の運転を伴う特定任意講習等の講習を受講した者であること
 ・自動車事故対策センターが実施する適性診断を受診した者で、運転に関し特に支障が認められない者であること 等

 なお、普通第二種免許の取得については、地方公共団体において、一定の目標を立て早期に取得できる体制の整備を図ること等が考えられる。

 また、運送主体においては、運転者の氏名、住所、年齢、自動車免許の種別、交通事故その他道路交通法(昭和35年法律第105号)違反に係る履歴、安全運転等に係る講習等の受講歴及び適正診断等の受診歴その他必要な事項を記入した運転者名簿を作成し、適切に管理するものとする。

(5)損害賠償措置
 運送に使用する車両全てについて、対人8,000万円以上及び対物200万円以上の任意保険若しくは共済(搭乗者傷害を対象に含むものに限る。)に加入していること又はその計画があること。

(6)運送の対価
 運送の対価については、当該地域における一般乗用旅客自動車運送事業の上限運賃額、公共交通機関の状況等地域の特性を勘案しつつ、営利に至らない範囲において設定されるものであること。

 この場合において、「営利に至らない範囲」については、当該地域における一般乗用旅客自動車運送事業の上限運賃額のおおむね2分の1を目安に、地域の特性を勘案しつつ地方運輸局長が具体的な基準を定めるものとする。

(7)管理運営体制
 運行管理体制が整っており、指揮命令系統が明確であるとともに、事故防止についての教育及び指導体制が整っていること。事故時の処理及び責任体制等が明確に整備されていること。使用する車両についての整備管理体制が確立されており、かつ、利用者からの苦情処理に関する体制が整備されていること。

 この場合において、上記に適合しているかどうかの判断に当たっては、運営協議の場における意見等を踏まえ、合理的な理由を示して判断が行われることが必要である。

 その際、検討に当たり具体的に検討すべき点を例示するとおおむね次のとおりである。
  ・運行管理に係る責任者が選任されており組織体制が整っていること、点呼、報告、指示、記録等に係る指揮命令系統が明確にされていること
  ・使用する車両についての使用権原が運送主体にあること
  ・事故防止、安全確保について必要な研修、講習、診断等が行われる体制が整っていること
  ・事故等の発生時において緊急の連絡体制が整備されており、対応に係る責任者が地方公共団体、NPO等の双方において明確であること
  ・利用者からの苦情に対し適切に記録、対応する体制となっており、対応に係る責任者が地方公共団体、NPO等の双方において明確であること
  ・その他有償運送の条件が常時確保されているかどうかについての管理体制が整っており、責任者が地方公共団体、NPO等の双方において明確であること 等

(8)法令遵守
 許可を受けようとする者が、法第7条の欠格事由に該当するものでないこと。

4.実施時期
 本処理方針は、平成15年4月1日以降に申請を受け付けたものから適用するものとする。


附則 1
 今回の取扱いに基づき許可した事案については、許可後3ヶ月を経過したのち運営協議の場を設け、実施状況を検証し問題点を整理したうえで速やかに本省に報告すること。

附則 2
 本件取扱いは、全国的に実施する時期までとする。


(別記)

 外部から見やすいように使用車両の車体の側面にボランティア輸送に係る有償運送に用いる車両である旨の表示事項及び方法は次のとおりとする。

 1.氏名、名称又は記号

 2.「有償運送車両」の文字

 3.文字はステッカー、マグネットシート又はペンキ等による横書きとし、自動車の両側面に行うこと。また、文字の大きさは縦横50ミリメートル以上とする。



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